学ぶ・考える

法話:大切なもの

大切なもの
法雲寺 釋 清章(鈴置清章)

私達は、自然、社会、政治、家庭、人、宗教などと深くかかわりあって生きています。これらは、私達にとって大切なものです。何か事件が起こるたびに政治が、社会が、他人が悪いと他のせいにしますが、自分もかかわり有る一人として受け止めたいものです。私は、これらの事について少し考えてみました。

まず、自然について。現在、地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊などがよく問題になっています。自然の恵みをもらって生きている私達にとって自然を守ることは、政治、企業ばかりでなく一人一人が考えなければいけない時が来ていると思います。

社会について。現代社会は経済的に豊かで便利になりましたが、心の豊かさがなくなったと思います。この事についても、政治家、宗教家、教育者ばかりでなく一人一人が考えなければなりません。

家庭について。「分かち合う苦しみは半分に、分かち合う喜びは倍に」といわれます。そして、喜び、悲しみ、苦しみを分かち合い、生んでくれた親や先祖をうやまい、生まれてきてくれた子を大切にし、また自分も家族にとって大切な人だと思われるようになりたいものだと思います。

人について。「悲しみのほぼすべては他人との関係から生まれる」とショーペンハウエルが言ったように、私達は人とのかかわりなしに生きていけません。人の悪口、不平、不満を言う前に他人を大切に思い、他人の立場でものを見られるようになりたいものです。悪口を言えば、自分に対しても陰でそのぶん言われているかも知れません。

宗教について。最近、格差社会が問題になっています。NHKのテレビでワーキングプアー(働けど働けど暮らし楽にならず)のことを放送していました。三つの仕事をかけもちして子供を育て、ついに力つきたお母さん。夜遅くまで働いても子供に学校に行かせてやれないお父さん。親と死別してゴミ箱から雑誌を拾ってそれを売って生活している青年・・・

観無量寿経というお経には、名誉、地位、財産をなくし、子供にも裏切られたインドの国の王妃が釈尊に出遇って、本当に大切なものを見いだしたとあります。真の幸福、真の大切なものを求めるのが宗教です。


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